ドラマ『ハゲタカ』感想~絶望感に癒やされる

企業買収について会議中の男性出典:https://cu.tv-asahi.co.jp/watch/227?official=1

木曜9時から放送中の、テレビ朝日系『ハゲタカ』についてのご紹介です。

同名の原作があって、NHKでも過去にドラマ化され、劇場版もありますが、そのどれひとつとして見ていず、なんの予備知識もないのですが、おもしろいです!

大ざっぱにくくると、外資ファンドによる企業買収もの? でもその単語、説明してみろと言われても、まるっきりきない、私、そっち系の完全ど素人です。

という私ですので、自信を持って、申し上げられます。

このドラマ、外資の買収の、何にも知らなくても、ぜんっぜん、だいじょうぶです。

途中回から見ても、ちゃんと話がわかります。死ぬほど。

なので下手な推奨説明なんかいらないというか、とにかく、

この夏、1時間、元気もらえるドラマです。

というのが、おすすめしたい理由です。

真夏の無気力状態に食べる辛めのカレーのように、すっきりします。全体がよく計算されていて、無駄なシーンが1秒もない。

また、大河ドラマなんかでときど~き、始めから終わりまで全員が叫んでる、みたいな印象のってありますが(失礼)、このドラマで「迫力」を前面におしだすのは、主役の「鷲津」役の綾野剛だけです。

新旧の名優たちが脇をかためてるんですが、2段階くらい抑えた迫力でトーンをそろえていて、ぜんぜん背景がうるさくないんですね。そのため、主役のすんごい黒っぽいキメ台詞が要所要所にバキバキはまって、もうほんとにわかりやすいドラマになっているのですね。

という感じで、アクの強いテーマなのに、だれが見てもわかりやすく楽しめるというドラマの原点の作りのなかで光る、このドラマ最大の魅力と思うのは、主役の鷲津のまっ黒い絶望感です。

絶望感がなぜ魅力かというと、悲しみや絶望を知らない(という役柄)の人を見ても、何も癒やされないからです。

鷲津の背景についてまったく知らないので、第1話でチラッと出た凄惨なシーンが関係するんだろうと想像はされるものの、この男をこんな絶望感におとしいれたものが何なのか、そこからどうして現在の職に就くにいたったのか、これからじわじわ明かされるんじゃないかと思って原作に手を出さずにいます。

鷲津ひきいる外資ファンドが、買収される側からいつもケダモノのような扱いで、経営側から気持ちいいくらい的確な言葉でののしられているんですが、だからといって、鷲津が正義ヅラなんかしないところもスッキリ感を後押しします。

ファンド側がスマートで、見ていてあんまり感じないんですが、設定はとにかく、経営側の足元を見て安く買いたたいてはよそに高く売りつけるゲス、という設定なので、ええ、しょせん腐肉あさりのハゲタカ、上等ですが、なにか?という、ゲスさを骨の髄まで自覚している鷲津の自覚っぷりが潔すぎて後味がよいです。

なぜかそのファンド側がラストでまっとうな正義に見えるのは、「経営とはほんらい人の幸せのためになされるもの、私腹を肥やすためではなく」という正しい経営哲学というか、企業のあるべき方向性というか、それを説くのが、買収企業側からののしられている鷲津だからなんですね。それが、実感のこもった魂からの言葉で語られるからなんです。

鷲津のまっ黒な絶望感と、そこから語られる、会社を営み製品やサービスを提供するということについての❝ハッとさせられる正しい視点❞。

それが、ど迫力の暗雲とそこからさしこむ一筋の光、というセットで清々しくしめくくられて、次も見たい!と思わせます。この夏、1時間元気をもらいたい、と思う人におすすめ。

【第8話無料配信中】配信期間:2018年9月20日 19:00までこちら